Q 短時間正社員制度ってどんな制度?
A 短時間正社員という言葉をご存知の方が大半だと思いますがこの制度はれっきとした厚生労働省が推進している制度なのです。
短時間正社員制度導入ナビのHPです↓
http://tanjikan.mhlw.go.jp/
2008年12月に「短時間正社員導入支援ナビ」が開設されましたが。ほそぼそ活動しているという感じでしたが、育児の法改正やワークライフバランス等で、そろそろ脚光を浴びそうです。
最近ではブータン王国が推進している「国民総幸福量」が注目を浴びています。金銭的、物質的豊かさを目指すのではなく、精神的豊かさを目指すべきだという考えです。一生懸命働くことも大事だけど、家族とのコミュニケーションを大事にする時間を作ろうという考えが今後広がりそうです。
短時間短勤務制度を導入している企業はありますが、理由が出産育児の為に限定しているケースが殆どでしょう。
短時間正社員は理由を問わず、
Q そもそも短時間正社員ってどんな社員?
A 次のいずれにも該当する者になります。
※パートやアルバイトと大きな違いは、
<労働時間>
正社員の所定労働時間 | 短時間正社員の所定労働時間 |
8時間 | 6時間 |
<就労日数>
週5日勤務で6時間だと週30時間となります。
※週4日勤務で7時間で週28時間とう形もありえます。
・社会保険等、年次有給休暇
法令によりますので、管理や周知が特に必要となります。
Q 短時間正社員に種類はあるのですか?
A 全部で3つのタイプがあります。
理由としては、
「妊娠・出産・子育ての為」「介護の為」「病気等で休職後職場復帰する為」
その他にも「夜間の学校・資格の学校に通う為」です。
便利な点としては、子育てや介護が落ち着いたとき。学校を卒業したり、資格を取得した時など、短時間正社員になる理由がなくなった時にいつでも正社員に異動できる点です。
理由としては
「定年後の再雇用の為」「地域活動やボランティアをする為」
理由としては
「社員登用試験で社員になる」
正社員になれるスキルを持っているが、家庭の事情の為、長時間働くことが出来ない。その為にパートとして就労している従業員を正社員として登用することで、モチベーションUPをすることが出来ます。
短時間と聞くと育児介護の為と連想しますが、タイプはさまざまです。
Q なぜ短時間正社員が進んでいるのですか?
要因として3つの側面から考えていきたいと思います。
<社会的要因>
@平成22年6月の改正育児介護休業法の施行
業務に必要なスキル、モチベーションがあるにも関わらず、子育てや介護の為にやむを得ず退職。その後、育児が落ち着いた時にパートとして働くといったケースが多くみられます。これらの主に女性従業員の職場定着の為に同じ会社に継続して働くことが出来る制度導入が今後必要となります。
A高齢者雇用安定法の改正や年金開始年齢の引き上げ。定年以降も働く高齢者が増えることで、短時間正社員とう働き方が受け皿になります。
・3歳未満の子を養育する労働者について、短時間勤務制度(6時間)を設けることを事業主の義務とする。
・3歳未満の子を養育する労働者が請求した場合、所定労働時間を超えて労働させてはならない。
<労働者側の要因>
自己啓発やボランティア活動等、私的な時間を充実させようとする生き方が見直されている。今回の東北の震災でボランティア活動をした人数は3月末までで5万人近くにも及び生き方を考えさせられた方もたくさんいると思います。
<企業側の要因>
・有能な人材の職場への定着や人材確保を容易にし、企業の競争力を高められる。
優秀な社員が出産育児又は介護、学校に行くなどの理由により、退職することを防ぐことが出来ます。他にも、優秀なパート社員が待遇に不満を持つこともありますが、正社員と同等な待遇を持たせることで職場定着を狙うこともできます。
・採用コストや教育訓練コストが削減できる。
例えば、時給900円で月20日就労のパート社員を採用した場合、
月の給与が約145,000円になります。この金額で短時間正社員を募集した場合、
採用に集まる人材や人数が変わってきます。
・従業員のモチベーション向上につながる。
・外部(顧客や社会)に対するイメージアップにつながる。
Q 実際に導入したいのですがどうすればいいですか?
@ 調査
まずは各部署の管理職、従業員にアンケートを取り、制度に対しての意見を聞く
企業から従業員の為という一方的な考えを持っても経費削減と受け取られて逆に不安を煽るケースもあります。
大事なことは、「従業員が何を望んでいるか?企業は人材育成についてどのように考えているのか?」を考えることです。
・基本給は「労働時間比例」で考えます。
正社員の労働時間が1日8時間、基本給が20万円
↓(労働時間75%減)
短時間正社員が6時間の場合、基本給は15万円
「正社員」、「パート」、「新規採用」からと色々なパターンから短時間正社員になるケースがありますが、賃金を決定する際は正社員の賃金を基準に考えます。
正社員の所定労働時間と短時間正社員の所定労働時間と比較して、その割合を乗じて決定いたします。
手当、賞与、退職金も同じように決めますが、注意しなければいけない点は「扶養手当」「住宅手当」等、生活に関連する手当は仕事内容に関連しない為、減額しない方が適切です。
B 評価制度を決める
既に正社員の評価制度がある場合、注意しなければいけない点は労働時間に見合った評価をすることです。正社員と比べて業務スキルは同じであるにも関わらず、労働時間が短い為に評価を達成できない場合があります。適正に評価されない為に、モチベーションが下がってしまうケースがあります。しかし、パートアルバイトではなくあくまでも正社員なので、評価基準を下げることなく、あくまでも時間内に出来る仕事という目線での評価が必要です。
C 教育訓練
正社員と同等な処遇をすることはもちろんですが、労働時間が短いために日常の業務内で訓練を行うOJTだけでは難しい面もあります。労働時間が短いので場数を踏めない、それをカバーする為に、OFFJTも積極的に活用しましょう。
のちのちのトラブルの原因にならないように短時間正社員就業規則を作成し、事業所の従業員に周知することが大事です。
・転換方法・賃金・就業時間・休日・年次有給休暇・社会保険等を明記します。
注意点は、不利益にならないようにすること。
そのことをしっかり従業員に周知することです。
・導入に際しての目的を明確にすること。そして、その概要や意思を会社全体に浸透させることです。どうしても会社側が行う制度は経費削減と見られがちの為、しっかりアナウンスすることが大事です。
・制度導入の際に短時間正社員の業務の見直しをするだけでは十分でなく、部署全体の業務分担の見直しや、部署全体の生産性向上への取り組み、部署全体のコミュニケーションの向上といったことまで踏み込んで検討して初めて効果がでるということです。
・短時間正社員と正社員の情報の共有化は大事です。よく、短時間正社員が退社した後、仕事内容に問題が発覚し、携帯やメール等で内容の確認を行といったことは発生します。少しならまだしも、頻繁に起こると業務時間外も仕事から抜け出せないということにもなりかねません。その為にも、業務の進行状況や問題についての情報共有は絶対です。
・超過勤務は常に発生します。短時間だからといって残業なしでは実態とかけ離れていますので、残業勤務をした場合は他の日で調整する等の柔軟な対応が必要です。